レジオネラ属菌の殺菌法
冷却水系におけるレジオネラ属菌の殺菌法
1.物理清掃(冷却塔の清掃、冷凍機の清掃、水の入れ替え)
冷却塔の下部水槽、充填材などの汚れをデッキブラシやジェット洗浄によって落とし、水の入れ替えを行なってください。頻度は汚れの程度に応じて行ないますが、毎月1回程度が一般的です。
冷凍機は、定期点検時に熱交換器の銅チューブをブラシ又はジェットで洗浄してください。
なお、清掃に際してはエアロゾルなどを吸入しないようにするため、保護マスク、保護メガネ、ゴム手袋等を着用してください。
スライムを除去することはレジオネラ属菌の除去対策として重要ですが、これらの作業では、冷却水の水管内のスライムは完全には除去されません。
2.化学洗浄の必要性、目的
冷却水系の機器や配管の壁面には、 スライムが付着しています。レジオネラ属菌はスライム中で増殖するので、 それらを除去することは、 レジオネラ属菌を元から断つ意味で重要です。冷却水系の隅々までスライムを除去するために、化学洗浄を行ないます。 洗浄時期は、 冷却塔の運転開始時、終了時、レジオネラ属菌数が102CFU/100mL以上検出した場合などです。
化学洗浄により、スライムの殺菌、剥離除去を行なうことで、その後の抗レジオネラ薬剤によるレジオネラ属菌の殺菌が効果的になります。これはスライムによる殺菌剤成分の消費が無くなるためです。
3.継続的な殺菌処理の必要性、目的
化学洗浄をすると一旦冷却水系は殺菌されますが、その後無処理のまま放置しますと、1~2週間程度でレジオネラ属菌が洗浄前の状態に戻ります。
レジオネラ属菌を102CFU/100mL未満に維持するためには、継続的な殺菌処理が必要です。
従って、冷却水のレジオネラ属菌の殺菌対策は、定期的な化学洗浄と継続的な殺菌処理を組み合わせて行うことが効果的です。
4.維持管理に関する防止策
日常の維持管理としては以下の方法により、レジオネラ属菌数の抑制およびレジオネラ症の防止を図ることが出来ます。
数日以上にわたる使用休止後は、再開する前に殺菌等の処理を行います。
化学洗浄
1.洗浄剤の種類と目的
2.洗浄のタイミング
①冷却塔の運転開始時。
②冷却塔の運転終了時。
③レジオネラ属菌が102CFU/100mL以上検出された場合直ちに洗浄。
洗浄後、検出限界以下(10CFU/100mL未満)であることを確認。
3.薬剤の種類別洗浄方法
処理時間、濃度は冷却水系の汚れ状況により異なります。
継続的な殺菌処理
1.多機能型薬剤
多機能型薬剤は総合水処理剤あるいは複合水処理剤などと呼ばれ、スケール防止剤、腐食防止剤、スライムコントロール剤とレジオネラ属菌の殺菌剤(又は抑制剤)を含有するものです(スライムコントロール剤と殺菌剤、抑制剤が同一薬剤の場合もあります)。 多機能型薬剤は薬注装置を使用し、連続的に注入して、その効果を発揮します。
(1)タイプ分け
殺菌型薬剤:その薬剤自体が菌数を減少させるタイプ
抑制型薬剤:化学洗浄などにより一旦菌数を低下させてから使用し、菌数増加を抑制するタイプ
(2)薬剤の注入方法
①冷却塔の化学洗浄を行なったのち、 冷却塔水槽に多機能型薬剤を初期投入します。
②冷却塔の運転開始時、 薬液注入ポンプを稼動させ、薬剤を連続的に所定の場所に注入します。
③薬剤の注入量は補給水量比例方式、冷却塔運転時タイマー制御方式、薬剤濃度制御方式等により、冷却水中の薬剤維持濃度が適正濃度になるように調整します。
④冷却塔の運転期間中、薬剤濃度を分析し薬剤維持濃度を調整します。
⑤なお、初期投入濃度及び維持濃度は薬剤の種類により異なりますので、個別の水処理計画に基づいて実施してください。
2.単一機能型薬剤
単一機能型薬剤とは、スライムコントロール・レジオネラ属菌の殺菌機能を有するタイプを示します。この場合、腐食防止・スケール防止機能を有する薬剤を別途注入します。このため、2液型薬剤とも呼ばれています。
以下にはレジオネラ属菌への殺菌剤を記載します(単一機能型薬剤には抑制タイプは使用しないでください)。
(1)レジオネラ属菌の殺菌剤例
1)酸化剤
冷却水中に2~5mg/Lの残留塩素濃度を維持すれば、 レジオネラ属菌に対する殺菌効果が得られます。しかし、鉄、銅などの金属に腐食性が強いので、実際は、腐食防止剤を併用し0.5mg/L程度の残留塩素濃度で使用されることが多くあります。
このタイプには固形品もあります。
2)各種有機系殺菌剤
冷却水系に使用される殺菌剤の多くは有機化合物であり、その組成、作用有効濃度は様々です (表−1、表−2)。
(2)薬剤ごとの添加方法
1)酸化剤
塩素は酸化力が強いので、高濃度の衝撃添加方法は冷凍機の熱交換器材質(銅、SUS材)又は、配管材質(鉄、SUS材)を傷めやすいため低濃度の連続添加方法をお願いします。
2)有機系殺菌剤
連続注入により、殺菌剤の有効成分を常に残留させることも有効ですが、ランニングコストの関係上、衝撃添加方法が望まれます。投入間隔はレジオネラ属菌数を減少させた後に、 菌数が立ち上がるまでの期間の殺菌効果持続期間が目安となり、季節にもよりますが一般的には2~7日です。
3.パック剤
スケール防止剤、 腐食防止剤、 スライムコントロール剤 と レジオネラ属菌の殺菌剤を含有する錠剤等の固形剤をプラスチック等の容器に入れた形態のものをいい、冷却塔の下部水槽、または散水板に固定して使用します。冷却水中に薬剤が徐々に溶け出す加工がされていて、効果は1~3ヵ月間持続します。
4.維持管理にあたり
冷却水系に使用される殺菌剤は、その組成、作用有効濃度は様々です。実際の冷却水での使用にあたっては添加濃度、接触時間を検討し、処理効果を細菌検査により評価して処理法にフィードバックします。