レジオネラ症と冷却水系の障害
レジオネラ症について
1.レジオネラ肺炎、ポンティアック熱
レジオネラ症はレジオネラ属菌が原因で起きる感染症です。
肺炎症状を呈し、 死亡例も報告されている「レジオネラ肺炎」 とインフルエンザに似た熱性疾患で自然治癒型の「ポンティアック熱」があります。
2.四類感染症
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」 ではレジオネラ症を4類感染症に指定しておりレジオネラ症診断時の医師の届出義務があります。
3.感染例
4.震災に関連するレジオネラ症の発生状況
5.感染経路
冷却水や浴槽水中で増殖したレジオネラ属菌が、 それらの設備から発生するエアロゾル※に内包されて飛散し、ヒトが吸入して呼吸器系に感染します。ヒトからヒトへの感染はありません。
※エアロゾル
・ 直径1~5μm
・ 菌を内包したまま肺胞に入りうる直径
冷却水系とレジオネラ属菌について
建築物の冷却水は、空調用冷凍機の冷却等に用いられます。冷却水の水温は一般的に10~40℃であると言われています。
レジオネラ属菌の発育至適温度は36℃前後(発育可能温度は25~43℃)で、60℃までは生存可能とされています。5月から9月にかけて冷却水の温度はレジオネラ属菌繁殖の最適温度に近づきます。
1.冷却水系でのレジオネラ属菌の増殖
レジオネラ属菌は、自然界の土、河川水、井戸水、湖水に広く分布しています。そこでの検出率、菌数レベルは高くありません。
それに対して、冷却水系は溶存酸素も豊富であり、温度、pHとも増殖する条件を満たしています。
2.冷却水系でのレジオネラ属菌の生息環境
冷却水系内、特に冷却塔本体や配管壁面にスライム汚染やバイオフィルム(細菌類、原生動物などの微生物から分泌される粘性を帯びた付着物)が発生する環境は、レジオネラ属菌の増殖を助長していると考えられます。
従って、スライムが発生している冷却水系はレジオネラ属菌が定着し、増殖する危険性が高い環境と言えます。
3.冷却水系でのレジオネラ属菌の検出状況
冷却塔の種類と障害
冷却塔は、冷凍機などで発生した熱を冷却水を介して大気へ放出する設備です。
ビル空調用の冷却水系では、冷凍機は建物内部の機械室に設置され、冷却塔は屋上に設置されることが多くあります。
冷却塔には開放式と密閉式があり、開放式には向流式(丸型)と直交流式(角型)があります。
開放式冷却塔では、 冷却水は空気に開放されており、濃縮や空気との接触に伴い、スケール、腐食、スライムの各障害や、レジオネラ汚染が発生します。
密閉式冷却塔でレジオネラ汚染が問題となるのは、冷却塔の機器内を循環する散布水であり、この系統は空気と接触、濃縮するので、スケール、腐食、スライムの障害も発生します。開放式冷却水及び密閉式冷却塔の散布水を、レジオネラ対策の必要な冷却水系として考えております。