冷却水系における検水採水時の注意点
2016年10月28日
空調用冷却水処理において、レジオネラ属菌による汚染状況の把握や防止対策(薬剤処理、化学洗浄等) の効果検証のため、レジオネラ属菌検出試験が行なわれます。より正確にレジオネラ属菌数を把握し、適切な処置を講ずるためには、試験精度の管理に加えて分 析試験に供するまでの検水の管理(採取方法、搬送・保管方法など)が重要となります。 以下にレジオネラ属菌検出試験を行なう場合の検水管理に関する注意事項を示します。
1.現場採取時における注意点
(1)採取容器
検水は滅菌したガラス製又はポリエチレン製等の容器に採取します。 |
これ以外の容器(飲料ペットボトル等)の使用は、例え一時的なものであっても新たな汚染(レジオネラ 属菌数の増殖を誘発する)原因となる可能性があるため絶対に避けるようにします。 |
(2)冷却水水質
塩素系薬剤を使用している冷却水を検水とする場合は、採取時に25%チオ硫酸ナトリウムを1/500量添加し、中和処理を行います。(※ 同様な容器が市販されています) |
検水中に塩素系薬剤が残存していると、これら殺菌成分が保管期間中にレジオネラ属菌ほか検水中の微生物に作用し、菌数が変化(減少)して、正確な菌数把握ができなくなる可能性があります。 |
(3)容器充填
容器の中への検水の充填は、上部に空間を残した状態(空気を入れた状態)とします。 |
空気の供給が断たれた場合、実際の使用環境と異なることから、レジオネラ属菌ほか検水中の微生物の生殖に影響を与え、菌数が変化(減少)する可能性があります。 |
(4)採取箇所
丸型冷却塔は流下水、角型冷却塔は下部水槽より採取します。各採取ポイントでの留意点は以下の通り。 |
1. 冷却塔流下水(丸型冷却塔) |
冷却塔充填材に汚れ(スライム等)が多量についている場合は、それらが検水中に混入しないよう十二分に注意して採取します。 |
2. 冷却塔下部水槽(角型冷却塔) |
冷却塔補給水供給口近傍での採取は冷却水が補給水により希釈されてしまう恐れがあるため避けます。 |
(5)物理清掃、化学洗浄後の採水
冷却塔および配管のフラッシング(水洗)を十分に実施し、バイオフィルムや堆積物等を排出し、冷却水が清澄になってから検水を採取します。 |
2.現場から検査施設への搬送時における注意点
搬送温度は6~18℃とし、直射日光を避ける。採取した検水はできるだけ早く検査する。やむを得ない場合は4~8℃で保存する。(採取から検査開始までは5日以内が望ましい) |
基準(目安) | 備 考 | ||
(1) 搬送方法 | 搬送日数 | 採取後 1~2日 | 検水は採取後1~2日のうちに検査機関へ届けます。 |
搬送温度 | 6~18℃ | 直射日光と熱を避けます。クーラーボックス(保冷剤入)等の保冷容器を用いて輸送する事が望まれます。 (※クール便を利用する際は、各運送会社の冷蔵温度に注意し、冷凍は厳禁とします) | |
(2) 保存方法 | 保管場所 (温度) | 冷蔵庫 (6±2℃) | 検査機関に持ち込む前に検水を一時保管する場合は、冷蔵庫(6±2℃)内に保管します。 |
保管期間 | 2~5日 以内 | 検査機関での検査までの保管期間は2~5日以内が望まれます。なお、濃縮検体の保存は14日を超えないようにします。 |