レジオネラ症防止対策

注意事項と効果的なご使用ポイント

薬剤を取り扱う場合の注意事項

1.一般的事項

薬剤を取り扱う際は、原則として通常の工業薬剤と同様の注意が必要です。薬剤投入時は保護具を着用し、飛散に注意して作業してください。万一体などにかかった場合は、速やかに大量の水で洗い流します。詳細については、安全データシート(SDS)に基づいて対応してください。 
また、抗レジオネラ用空調水処理剤については、安全性及び取り扱い時の注意事項がラベル等に記載されていますので、これらの注意事項に沿ってお取り扱いください。

2.冷却水ブロー排水の放流

放流時は排水に関連する法律・条例の基準を遵守してください。

3.薬剤の保管及び廃棄処理

薬剤はSDSに記載された適切な方法で保管してください。また、薬剤はその種類によって安全に廃棄処理する方法が異なっています。よって、SDSに記載された処理方法で適切に廃棄処理して下さい。

(参考)排水に関連する法律

水質汚濁防止法
湖沼水質保全特別措置法
瀬戸内海環境保全特別措置法
下水道法
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律

冷却水系における検水採水時の注意点

空調用冷却水処理において、レジオネラ属菌による汚染状況の把握や防止対策(薬剤処理、化学洗浄等) の効果検証のため、レジオネラ属菌検出試験が行なわれます。より正確にレジオネラ属菌数を把握し、適切な処置を講ずるためには、試験精度の管理に加えて分 析試験に供するまでの検水の管理(採取方法、搬送・保管方法など)が重要となります。 以下にレジオネラ属菌検出試験を行なう場合の検水管理に関する注意事項を示します。

1.現場採取時における注意点
(1)採取容器
検水は滅菌したガラス製又はポリエチレン製等の容器に採取します。
これ以外の容器(飲料ペットボトル等)の使用は、例え一時的なものであっても新たな汚染(レジオネラ 属菌数の増殖を誘発する)原因となる可能性があるため絶対に避けるようにします。
(2)冷却水水質
塩素系薬剤を使用している冷却水を検水とする場合は、採取時に25%チオ硫酸ナトリウムを1/500量添加し、中和処理を行います。(※ 同様な容器が市販されています)
検水中に塩素系薬剤が残存していると、これら殺菌成分が保管期間中にレジオネラ属菌ほか検水中の微生物に作用し、菌数が変化(減少)して、正確な菌数把握ができなくなる可能性があります。
(3)容器充填
容器の中への検水の充填は、上部に空間を残した状態(空気を入れた状態)とします。
空気の供給が断たれた場合、実際の使用環境と異なることから、レジオネラ属菌ほか検水中の微生物の生殖に影響を与え、菌数が変化(減少)する可能性があります。
(4)採取箇所
丸型冷却塔は流下水、角型冷却塔は下部水槽より採取します。各採取ポイントでの留意点は以下の通り。
1. 冷却塔流下水(丸型冷却塔)
冷却塔充填材に汚れ(スライム等)が多量についている場合は、それらが検水中に混入しないよう十二分に注意して採取します。
2. 冷却塔下部水槽(角型冷却塔)
冷却塔補給水供給口近傍での採取は冷却水が補給水により希釈されてしまう恐れがあるため避けます。
(5)物理清掃、化学洗浄後の採水
冷却塔および配管のフラッシング(水洗)を十分に実施し、バイオフィルムや堆積物等を排出し、冷却水が清澄になってから検水を採取します。
2.現場から検査施設への搬送時における注意点
搬送温度は6~18℃とし、直射日光を避ける。採取した検水はできるだけ早く検査する。やむを得ない場合は4~8℃で保存する。(採取から検査開始までは5日以内が望ましい)
基準(目安) 備 考
(1) 搬送方法 搬送日数 採取後 1~2日 検水は採取後1~2日のうちに検査機関へ届けます。
搬送温度 6~18℃ 直射日光と熱を避けます。クーラーボックス(保冷剤入)等の保冷容器を用いて輸送する事が望まれます。
(※クール便を利用する際は、各運送会社の冷蔵温度に注意し、冷凍は厳禁とします)
(2) 保存方法 保管場所 (温度) 冷蔵庫 (6±2℃) 検査機関に持ち込む前に検水を一時保管する場合は、冷蔵庫(6±2℃)内に保管します。
保管期間 2~5日 以内 検査機関での検査までの保管期間は2~5日以内が望まれます。
なお、濃縮検体の保存は14日を超えないようにします。

抗レジオネラ空調水処理剤を効果的にご使用頂くために

抗レジオネラ空調水処理剤協議会登録品を(以下、抗レジオネラ薬剤)を使用しても約7%(2017年度調査)の冷却水系でレジオネラ属菌が検出されています。これは、様々な要因によってレジオネラ属菌の抑制に必要な有効成分が保持されないことによるもので、抗レジオネラ薬剤を効果的に御使用戴くためのポイントを記載します。
 ※具体的対策については協議会会員各社にご相談ください。

1.当初から薬剤添加量や濃度が不足する場合

1) 薬注装置の維持管理不良

(原因)抗レジオネラ薬剤を薬注装置で添加している場合、薬注ポンプのエアーロック、薬剤の補充忘れ、他の故障により薬注されない、あるいは薬注ポンプ吐出量の過少設定の結果、計画濃度が冷却水系に保持されていない場合があります。

(対策) 日常管理で薬注ポンプの稼動・吐出量、薬液タンク残液の点検を行い、処理計画通りの量が添加されていることを確認してください。

2)冷却水系保有水量の過少見積もり

(原因) 抗レジオネラ薬剤を間欠添加する場合、保有水量が過少に想定されていれば、添加量(濃度)不足を招きます。

(対策) 冷却水系全体の正確な保有水量を確認し、保有水量に対して適切量を算出して添加してください。

3)停止系統の問題

(原因) 抗レジオネラ薬剤を添加しても循環ポンプが稼動していない系には行き渡らず、レジオネラ属菌が検出される場合があります。

(対策) このような冷却水系の場合は、定期的に全ての循環ポンプを稼動して、全体に有効成分を行き渡らせてください。

2.抗レジオネラ薬剤の有効成分濃度が低下する要因が存在する場合

1)スライムによる系内汚染がある

(原因) 抗レジオネラ薬剤は、冷却水系内にスライム汚染が存在する場合、有効成分がスライムにより消耗され、有効濃度不足によりレジオネラ属菌の抑制が不十分となる場合があります。

(対策) スライム汚染状況を確認し、冷却塔や冷却水の水管の清掃または添加量を標準推奨量よりも増やすなどの対策が必要です。又、スライム汚染が著しい場合には、化学洗浄も有効な方法です。

2)補給水水質や周辺環境の影響がある場合

(原因) 補給水水質や周辺環境の影響により冷却水中へのアンモニアの混入、高COD(化学的酸素要求量)条件や窒素、リンなど微生物栄養源が高濃度となる場合は、スライム汚染の要因となるばかりでなく、抗レジオネラ薬剤の有効成分によっては有効性の低下や消耗が激しくなる要因となります。

(対策) これらの状況に対応した抗レジオネラ薬剤の有効成分の選定または添加濃度の見直しや水質管理値の再設定が必要となります。なお、周辺環境の見直しが必要な場合もあります。

3)冷却水系統内での滞留時間が長い時に、分解・消耗が起こる場合

(原因) 抗レジオネラ薬剤を冷却水補給水量に対して比例注入している場合は、負荷の低下により補給水量が低下すると補給水に対する添加量が適正であっても冷却水循環系内に長時間滞留する条件となり、有効成分の分解・消耗を招きます。また冷却塔稼働率の低下により停止時間が長くなる場合や極度の高濃縮環境においても同様の減少が生じます。

(対策) 冷却水の入れ替わりが少なく滞留時間が極端に長くなる場合は、定期的な一括添加の併用や適切なブローの実施等の対策が必要となります。

3.冷却水系内にレジオネラ属菌の棲息を保護する環境が存在する場合

1)冷却水系内にスライム、バイオフィルム(生物膜)やアメーバ類が存在する場合

(原因) 冷却水系内にスライム汚染やバイオフィルムが存在すると、レジオネラ属菌を含む微生物類の増殖の温床となります。またアメーバ類などの原生動物の内部にレジオネラ属菌が寄生増殖し細胞を破壊して遊出することも知られています。スライム汚染やバイオフィルムの存在は、抗レジオネラ薬剤の有効成分を消耗させます。また、バイオフィルムや原生動物内部に存在するレジオネラ属菌と抗レジオネラ薬剤の有効成分との接触を阻害することになります。

(対策) スライム汚染に応じて冷却塔や冷却水の水管の清掃、または薬剤添加量を標準推奨量よりも増やすことやバイオフィルム剥離効果のより高い成分の薬剤を使用する等の対策を実施してください。スライム汚染が激しい場合には化学洗浄実施後に抗レジオネラ薬剤を添加することが有効です。

2)冷却塔上部・下部水槽に堆積物が多い場合

(原因) 周辺環境の影響で土砂等の粉塵・塵埃が冷却塔に吸引され、冷却水系に堆積物が多くなると、堆積物が微生物類繁殖の温床となりバイオフィルムやスライムが生成されやすくなり、9-3①によるレジオネラ属菌検出の要因となります。

(対策) 冷却塔清掃を頻繁に実施する、循環ろ過装置を設置する等により、外部から吸引された堆積物を除去する処置が必要です。

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